プロカメラマン(フォトグラファー)への撮影依頼の際、日時と場所を決めるだけでは写真撮影をすることはできません。実は依頼者側も準備が必要になります。
どのようなことを事前に決めておく必要があるか、また当日はどのような体制でいる必要があるかを解説します。
1.写真撮影の下準備をする
最も大切なのは下準備です。下準備の有無で撮影当日のスムーズさや写真自体のクオリティが変わると言っても過言ではありません。
1.1【下準備その1】撮影リストを作る
限られた時間内で撮影をスムーズに行うためには、どのような写真を撮影するかを事前にリストアップする必要があります。
撮影でお伺いすると、「撮影内容はカメラマンさんにお任せします。自由に撮影してください」と言われるケースがあります。イベントの記録撮影など一部の撮影ジャンルを除き、ホームページ用の写真やビジネスプロフィール写真、商品写真などは、写真を掲載する媒体やどのような戦略でどのような写真を見せたいかといったクライアント側の意向が色濃く出るものですので、とても大切なリストです。
例えばホームページやカタログ用の写真など、デザインが絡む写真撮影の場合には、デザインをベースに「この場所にはこのような写真が必要」といったものを確認しながらリストアップすることで、撮影漏れや、撮りすぎ(結果他のカットを撮影する時間がなくなる)ことを防ぐことができます。
(イベントの撮影依頼の場合には、詳細な撮影リストのかわりにイベントの流れなどが分かる資料をカメラマンに共有することをおすすめします)
仮に撮影リストを準備せずにカメラマンの意向だけで撮影してしまうと、納品後「こんなはずではなかった」「必要な写真が撮れていない」「追加撮影をお願いすることになり、予算オーバーになってしまった」といったトラブルの元になります。
どのような写真撮影をするかはカメラマンが撮影当日に決めることではなく、依頼確定前に依頼者側が決めておく必要があるものとなります。
撮影当日はカメラマンが撮影リストを見ながら次々と撮影をこなす、という撮影が理想的です。
1.1.1撮影リストは「誰を」「どこで」「どのように」撮影するかを決める
撮影リストの作り方は、上記の情報を撮影当日までに箇条書きで用意するだけで基本的には問題ありません。
例えば以下のようなイメージです
・社長ポートレート(社長室で、座りと立ち1パターンずつ)
・従業員ポートレート(白い壁のある会議室で、正面左右ポーズを取りながら撮影、10名程度)
・オフィス内観(10部屋程度、エントランス含む、全て無人で撮影)
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また、事前に被写体となる方には撮影がある旨、撮影した写真がホームページなどに掲載される可能性がある旨を共有しておきましょう。事前の通達がなければ、
- 「ホームページに掲載してほしくないです」
- 「服装もメイクも適当だから撮影されたくないです」
などといって撮影ができなくなるケースも過去の撮影時によくあるケースでした。
また、従業員の方をモデルにする場合は退社後も撮影した写真を使い続けても良いかなど事前に確認をしておく必要もあるでしょう。
1.2【下準備その2】撮影の流れを決める(香盤表を用意する)
撮影リストが決まったら、どのような順番で撮影するかを決めましょう。
1.3【下準備その3】納品形式等の画像の形式を決める
写真データの納品形式を事前に決めておきましょう。
基本的にはカメラマンは指定がなければJPGと呼ばれる最も一般的な画像形式で納品するケースが多いです。
その他、何も処理を加えていない撮影時のままのRAW(「ロー」と読みます)形式での納品を希望されるケースもあります。ただ、RAW形式の画像は専門のソフトウェアが入っていないパソコンでは扱うことは難しいので、特段の理由がない限りJPG形式での納品をおすすめしています。
また、納品する写真の縦横比が事前に決まっていたり、縦位置・横位置が決まっている場合には事前に決めておきましょう。
1.4【下準備その4】編集の有無を決める
写真の「編集」には一般的に「現像処理のみ」と「細かなレタッチ」の二段階あります。納品データをどこまで追い込む必要があるかを決めておきます。
1.4.1「現像処理」とは
先述した写真を撮影したままのRAWデータを専門のソフトウェアで読み込み、色合いや明るさのみを調整してJPGデータとして出力します。この処理を「RAW現像」「デジタル現像」「現像」などと呼びます。
人物写真の肌の色合いなどは調整されます。
一般的なカメラマンであれば、料金内でこの処理を行うケースが多いです。
1.4.2「レタッチ」とは
(厳密にはRAW現像もレタッチに含まれることもありますが、)現像の完了した写真をさらに一枚ずつ編集する作業になります。
先述の現像処理には含まれなかった、人物写真ならほくろやシミといった不要物の除去や美肌処理、建築写真の場合コンセントの除去や電線の除去、その他様々な細かな処理を行うことができます。
これらの細かなレタッチ作業に関しては、納品後に依頼者から該当のファイル名と希望する処理内容をカメラマンに依頼して、見積もりを行うか、レタッチ専門のレタッチャーと呼ばれる職業の方に依頼されるケースが多いです。
1.5【下準備その5】納期を決める
撮影した写真データがいつまでに必要かを事前に決めておきましょう。
納期を早めれば早めるほどカメラマンが処理をする時間が短くなるため、できる限り撮影から1週間程度を目安にすると良いでしょう。(納期が短すぎる場合、撮影依頼自体を受けることが難しい場合もあります)
- 「RAW現像込みで、撮影日から1週間程度」
- 「RAW現像は不要なので、撮影したRAWデータをそのまま撮影現場で渡してほしい」
などです。
1.6【下準備その6】支払い形式を決める
撮影のギャランティ(報酬)をどのタイミングでカメラマンに支払うかを事前に決めてカメラマンに連絡をしましょう。
撮影料金の相場は「プロカメラマンに撮影依頼する際の料金相場や気をつける点」をご確認ください。
2.撮影依頼時のメールテンプレート
カメラマンに直接撮影依頼をする場合、カメラマンが必要とする情報をまとめて連絡をすることでスムーズに撮影依頼を進めることができます。
以下は撮影依頼メールのテンプレートになります。
先述した「撮影リスト」がこの段階で決まっていれば、合わせてカメラマンに連絡することをおすすめします。
○○様(カメラマンの名前)
はじめまして。株式会社○○の○○(依頼者の名前)と申します。
この度当社では○○(ホームページ用写真、ビジネスプロフィール写真、イベントの記録等)の写真撮影をプロのカメラマンさんにお願いしたく、ご連絡させていただきました。
撮影に関しては以下の条件でお願いしたいと考えておりますが、ご都合によって調整可能ですので、ご相談させていただければ幸いです。
●会社名 :株式会社○○
●担当者氏名 :○○
●オフィス電話番号 :03-xxxx-xxxx
●緊急連絡先 :090-xxxx-xxxx
●第一希望日 :11月6日
●第二希望日 :11月7日
●第三希望日 :11月8日
●希望入り時間 :午前10時
●拘束予定時間 :8時間程度(1時間休憩込み)
●希望納期 :撮影日より1週間程度(RAW現像込み)
●納品形式 :JPG
●予算 :○万円(税別)程度
●交通費 :電車代・ガソリン代・駐車場は実費料金を請求書に計上してください。
●撮影場所 名称 :当社オフィス
●撮影場所 住所 :東京都千代田区○○
●支払い方法 :納品月末締め、翌月末払い
3.写真撮影当日に気をつけること
撮影当日もカメラマンに撮影を丸投げしてはいけません。「カメラマンと一緒に作品を作る」という気持ちで立ち会う必要があります。(イベントの記録写真の場合は基本的にカメラマンにお任せで問題ありません)
カメラマンが撮影したデータを随時確認しながらイメージと相違がないかなどを確認しながら、撮影を進めていきましょう。例えば「明るい職場」をアピールしたい求人用のホームページ撮影なのに、被写体の方の笑顔が少ないと感じたら、カメラマンにその旨を共有して軌道修正をする必要があります。
以上がカメラマンへの写真撮影依頼時に気をつける点です。
deltaphotoでは写真撮影に関するご相談はいつでも受け付けていますので、ご不明点などございましたら何でもご連絡いただけますと幸いです。
Author
この記事を書いた人
1987年広島生まれ。
プロカメラマンマッチングサービス「TOTTA」や写真撮影・動画撮影サービス「deltaphoto」を手掛けるカメラマン。キヤノンユーザ。ビジネス撮影で日本全国出張撮影しています。