コスプレイヤーさん・コンパニオンさんの撮影現場でよく見る、フラッシュ(ストロボ、スピードライト)用のL字の金具。ニュースの現場映像に写り込んだ、報道カメラマンもこの金具をよくつけています。彼らはこれから説明する「影のコントロール」の理由以外にも、混沌とした撮影現場でカメラマンとカメラマン、機材と機材がぶつかり合い、機材の破損を防ぐ目的もあります(これをつけておらず、機材を強くぶつけてしまうと、ストロボが根本からポキっと折れることがあります)。
雑誌のタレント撮影でも多用するアイテムです。
このL字型の金具は「ブラケット」と呼び(よくブランケットと間違ってる人がいます…)、本来カメラの上部につけるストロボの位置をカメラの横側に移動させることにより、影の出方をコントロールすることができます。
では、どのような効果があるのでしょう。
1.実際に試してみる
1.1 そのまま撮影!
まず、Nikon D810の内蔵ストロボを使い、縦位置で撮影してみると…
見事に影が出てしまっています。白壁からモデルさんまでの距離は約50cm離れており、すべて60mmのレンズで撮影しています。また、撮影時部屋は暗くし、ほぼストロボ光のみで撮影しています。
本来カメラの上に付いているストロボが撮影時にレンズの左側で光ることにより、逆の右側に影が出てしまいます。
次にクリップオンタイプのストロボ、ニッシンジャパンさんのマシンガンストロボ「MG8000」を使って検証してみます(全て1/1フル発光)。
影の大きさがより大きくなってしまいました。大きいクリップオンタイプのストロボはレンズから距離が離れてしまうので、その分影が横に伸びてしまいます。また、影の境目が更にはっきりしています。
※テストで使用したMG8000はカメラメーカー純正のものと比べ、固めの光を出す傾向にあります(発光管が特殊な材質で作られているためだと考えられます)。その為、カメラメーカー純正のものよりも周辺の露出が落ちて描写されています。
1.2 ディフューザーで撮影
影を柔らかくするためのツールとして使われるのがディフューザー。今回はMG8000純正のキャップタイプのディフューザーを付けています。
柔らかくなりました。後ろに落ちる影の濃さも薄く、境目も柔らかくなりました。しかし、影は気になります。
1.3 ディフューザーにブラケットを追加して撮影
次に、L字型のブラケットを使い、カメラの左側にストロボを移動させます(左右どちらかに移動させるかは、好みです)。
今までレンズの左側に合ったストロボが、真上に移動したことにより、影がモデルさんの真下に出ています。そのため、被写体に隠れ、目立たなくなっています。
屋外ロケや、天井が高い場所などでは、有効的な方法です。
ただ、まだ後ろに影は落ちており、ストロボを炊きましたという写真になっています。
1.4 天井バウンスで撮影する
天井が高すぎず、大きすぎず、白壁の会議室などの室内で撮影する場合「天井バウンス」が有効的です。天井バウンスとは、ストロボを天井に向け焚き、光を拡散させる方法です。このとき、ブラケットは外しています。
より自然な写真となりました。しかし、このディフューザーを付けた状態で天井バウンスをすると、ストロボの発光面自体から光が「拡散」されてしまうため、条件によってはストロボと逆側に影が落ちてしまうことがあります。
1.5 天井バウンスでもブラケットを使ってみる
するとこうなります。勿論理屈としては同じなので、被写体の後ろに影は落ちているものの、ほとんど目立たないようになってきました。
撮影時は壁から約50cmほど離れての撮影ですが、もう少し「影の落ちる壁」から距離を取れば、パッと見ただけで影はわからないようにまではコントロールできるようになるでしょう。
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1.5.1 バウンスとディフューザーの関係
バウンスにより、光を拡散し、撮影できる条件としては「白い壁」「高すぎない天井」「大きすぎない部屋」が挙げられます。
- 「白の壁」
→ 色のついた壁にストロボを焚いてしまえば、その色のついた光を回してしまい、「色かぶり」の原因となります。また、黒の天井や壁の場合は、光そのものが跳ね返ってきません。 - 「高すぎない天井」
→ 単三電池四本で動くストロボでは、高い天井に光を届けることは出来ません。屋外でも同じく、青空に向かってストロボを焚いても意味は無いでしょう。 - 「大きすぎない部屋」
→ 同じく大きすぎると光が回らないのです。
しかし、壁が黒く、また場所自体も暗い、ライブハウスのような場所でストロボを直射したくない場合、ストロボにキャップタイプのディフューザーを付け、天井バウンスの要領で発光すれば、ストロボの発光面から光が微量に拡散されますので(ディフューザーがなければ難しいです)、その光を頼りに撮影することも可能です(同じ理屈で、被写体との距離が近ければ屋外撮影で被写体に当てることが出来ます。ただし、この使い方だと(特にTTLなどオートモードで発光量を決めている場合)発光管に大きな負荷がかかりやすくなります)。
また、その場合もブラケットを使ったほうが、縦位置写真では影は被写体の後ろに落ち、目立たなくなります。
1.6 天井があれば壁もある
天井にバウンスする「天井バウンス」があれば、壁にバウンスする「壁バウンス」をすることもあります。
この場合、右側に大きな影ができてしまいましたが、光自体は拡散させているので、壁から更に距離を取れば、影は目立たなくなるでしょう。
そして、左側からのバウンスのため、モデルさんの右半身部分によく光があたっており、簡易的なライティングとしても使えます。
モデル:アイアンクリエイティヴ所属 中野杏
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この記事を書いた人
1987年広島生まれ。
プロカメラマンマッチングサービス「TOTTA」や写真撮影・動画撮影サービス「deltaphoto」を手掛けるカメラマン。キヤノンユーザ。ビジネス撮影で日本全国出張撮影しています。